夏のWengen滞在の日々 2018年7月27日〜8月7日
このところ夏のスイスでのハイキングは、地域もホテルも気に入っているところがあるので、そこに行って
過ごすことが多くなっている。Berner Oberland地方は、Eiger（3970m）、Monch（4107m）、
Jungfrau（4158m）の三山を間近に見ながら歩くことが出来るハイキングコースが縦横無尽に走っていて、
ロープウェイや登山鉄道も見事に整備されている。今回の旅行は、年齢とともにだんだんと無理の利かない
体になっていることを実感しているので、できるだけ要所要所で体を休めながら過ごすために、Frankfurtに
着いた日は駅の近くのホテルに一泊し、次の日に鉄道でWengenに行き7泊して、また鉄道でFrankfurtに
戻って二泊して日本に帰るという日程にした。Wengenのホテルは、
今回で３度目となるAlpenrose（写真１）であり、
価格の割には広いバルコニーが付いたおり、そこから堂々としたJungfrauの姿が見える部屋（写真２）を
選んでくれていた。
２年前に行ったときには、跡取り娘が結婚していて、今回は１歳になる男の子を見ることができた。すっかり
代替わりが進んでいて、お客さんもこれまでで一番多く、まだ所々でぎこちないものもあったが勢いを
感じた。話をしてみると、夏はとても忙しいが、冬はそれほど客も多くなく、一息付けるのでハッピーだと
言っていた。そこには収益だけを追い求めているだけではない、生活の質を大事にする奥深さが感じられた。
Grindelwaldのホテルに滞在したときを加えると、Berner Oberland地方に滞在するのが４度目ともなると、
気に入ったハイキングコース、新たに行ってみたい場所などがはっきりしているので計画も立て易い。
お気に入りの２つのハイキングコースに加え、高山植物園Schynige Platte、湖Brienzerseeに行って
みることにした。
Ａ．お気に入りのハイキングコース
1.Oberland３山を間近に見ながらのハイキングコース
Wengen（1274m）からKliene Scheidegg（2061m）まで登山電車で行き、Oberland３山をすぐ側で
見上げながら歩く、このコースは雄大なOberland３山の大きさを実感できるので格別である。間近すぎて
３山が１枚の写真に収まらない。今まで何度も歩いて写真も撮っているが、今回は気がついてみたら写真は
１枚も撮っていなかった。
2."Mountain Veiw Trail"ハイキングコース
Wengenから登山電車でLauterbrunnen（796m）まで下りて、ロープウェイでGrutschalp（1489m）
まで行き、そこから登山電車でMurren（1645m）まで行く（写真３）。写真３は、Wengenから
ロープウェイで登った所のMannlichenから撮っていますが、何度撮っても飽きず、見るたびに撮りたくなる
アングルです。
手前にWengenが見え、その右の谷底にLauterbrunnenがあり、そこから林の中に直線上の筋が走って
いますが、それがロープウェイの道です。写真の中心部の断崖絶壁の上にあるのがMurrenです。このコース
は、Oberland３山を正面から見ることができ、少し離れているので写真の収まりも良いです（写真４）。
いくつかコースが有るが、今回は高いところを歩くコース"Mountain Veiw Trail"を選びました。コースの
途中には高山植物がまとまって咲いている場所が有り、思いがけずお花畑に出会って一息付きました
（写真５）。
Ｂ．お花畑のハイキング
1.MannlichenからHolensteinまでのハイキング
Wengenからロープウェイで登り切った所にMannlichen（1919m）があり、Wengenの反対側へ下りる
ロープウェイで一駅行った所がHolensteinである。このロープウェイの終点がGrundであり、Grindelwald
のすぐ側にある。Grindelwaldに行った場合には、このロープウェイに乗ってMannlichenに行き、更に
ロープウェイでWengenに帰るときにはよく利用する。上から見ていると、広い放牧場になっているので
いつも牛が何頭もいるし、比較的優しいハイキングコースもいくつかあるので、親子連れで歩いているのを
よく見かける。途中にはアルペンホルンが３本置いてあり、時々吹いているのを見かける。どうも、自由に
吹いて良いようなので、一度行って吹いてみたいと思っていた。歩き出すと間もなくお花畑が広がっていて、
場所によっては牛にまだ食べられずに残っている花がたくさんあったので、このコースも充分に楽しめること
が分かった。お昼頃だったので、まだ人は少なく、３本のアルペンホルンをたっぷり時間をかけて、吹くこと
が出来た（写真６）。
マウスピースはトランペットやトロンボーンなどの金管楽器と共通しているので、すぐに要領が分かった。
中学の時、ブラスバンド部でクラリネットを吹いていたが、他の楽器も手当たり次第吹いていたお陰である。
ただし、レガートはすぐには出来なかった。
2.FirstからSchreckfeldまでのハイキング
Grindelwald（1034m）からロープウェイで終点のFirst（2168m）まで登り、ロープウェイの一駅分を
Schreckfeldまで歩くコースである（写真７）。
二年前に来たときは、Firstの近くにお花畑があるという情報を頼りに探してみたが結局分からずじまい
だったが、ハイキングコースに沿って歩き始めたら間もなく花が咲いている場所がずっと続いていた
（写真８）。
今年は花の咲き出しが早かったようで、２年前と少し様子が違っていた。山の場合は、高度が1000m異なる
と気温は6.5deg違ってくるので、前回と同じ場所では花が終わっていたとしても、高い所に行くとまだ
咲いているということになり、どこかでは見られるということになる。
Ｃ．Wengen周辺の観光スポット
1.民族衣装祭（Trachtenfest）
８月１日はスイスの建国記念日であり、この時期各地でいろいろなイベントが行われる。ホテルの掲示板を
見ていたら、７月29日にMannlichenで11時からTrachtenfest（民族衣装祭）があるということだったので、
早速出かけることにした。民族衣装を着ての伝統的な踊り（写真９）、ヨーデル（写真10）、
アルペンホルンの演奏（写真11）、木のスプーンを使ったパフォーマンス（写真12）や鞭を使った
パフォーマンスなどの出し物があった。中でも木のスプーンを使ったパフォーマンスは、二本の木のスプーン
をカスタネットのように使って、自由自裁に腕、肩、膝などにぶつけて音を出し、しかもリズムを正確に刻む
ので面白かった。もう一方では、箒の柄に短い棒をぶつけてリズムを取っている。いずれも、Oberland３山
をバックにしてのパフォーマンスだからこそ映えるのであり、この環境にしてこの音楽ありということを
つくづく実感した。
2.Schynige Platte
Wengenから登山電車でWilderswillまで行きそこで別の登山電車に乗り換えてSchynige Platte
（2068m）までかなりの急勾配を登っていく。途中、林の中から湖が見えたりするが、森林限界を超え高い
木が無くなった途端に、Oberland３山が目に飛び込んでくるので皆が歓声を上げる。登山電車を降りて
高山植物園の方に歩いて行くと、日本語の看板（写真13）がある。
二つの高山植物園は、2008年に姉妹提携を締結したようだ。自由に入れるようになっていて、7000種もの
高山植物が植えられて管理（写真14）されている。
一通り順路に従い回ってはみたが、ゆっくり見ようとしたらかなり時間が必要で、改めてもう一度来たい場所
だと思った。
3.Mendelssohn Memorial
Mendelssohnは、1842年にWengenに立ち寄った際にJungfrauのスケッチ（写真15）を描いており、
記念碑（写真16）が建てられている。
Mendelssohnは絵画にも関心を示し、多くの水彩画を残しており、その一端を示すものと思われる。今まで
もどこにあるのか気になっていたが、今回ホテルでもらったパンフレットに道順が示されており、片道20分
程で行ける場所にあることが分かった。途中、木の間からJungfrauが見える場所（写真17）もあり、
Mendelssohnも同じような景色を見たのかなと想像を膨らませた。Wengenでは、８月の後半に
メンデルスゾーン音楽祭があるので、メンデルスゾーンが好きな人にはお勧めである。
4.Brienzersee
Berner Oberland地方には大きな湖が２つ、トゥーン湖（Thunersee）とブリエンツ湖（Brienzersee）
がある。最初は、トゥーン湖の湖畔には古い村があるのでそんな所も行ってみたいと思い、船の時間を
調べたらトゥーン湖は大きいので時間が掛かるため、手軽に行くのは難しいことが解った。それでブリエンツ
湖を一周することにした。Interlaken Ostの船着き場（写真18）には多くの人が集まってきて、定刻通りの
出発となった。湖畔の村の海水浴場ではゆったりと水泳を楽しんでいる人がいた（写真19）。
今年の旅も、楽しいことがあったり、いやな目に遭ったりと色々なことがあり、多くの刺激を受けた。
いやなこととはスリに遭い現金を取られたことである。話としては、パスポートやクレジットカードなど
丸ごと取られて、大変な目に遭ったなどと聞いている。特にパスポートを取られた場合には、仮のパスポート
を発行してもらわないと身動きが出来ないことになり、そのためには何日も費やすわけだから、旅行どころ
ではなくなってしまう。取られたのは現金だけだったので幸いと言うべきかもしれない。
楽しいこともあった。Wengen滞在の四日目の夜の食事を始めて間もないころ、男性が英語で「日本語を話し
ますか」と声をかけてきた。Atlantaから来た米国人で高２の息子さんが日本語を勉強しているので、
話をして欲しいということだった。暫くしてからJakeという息子さんを紹介しに来たので少し立ち話をした。
高２にしては子供っぽい印象だったが、日本語はなかなかどうして、日常生活には困らないくらいの
会話レベルだった。後で知ったが、独学でこのレベルまで上達したとのことだったので驚いた。8月1日は
スイスの建国記念日であるが、この日にホテルでは宿泊客に対して、パーティーを開いてくれる。この席で
Jakeとゆっくり会話をすることが出来たが、Wengenでアメリカ人と日本語で会話をするという珍しい経験
をすることが出来、大いに盛り上がった。
嬉しいこともあった。一つは、Frankfurtから飛行場に行こうとして間違った電車に乗ったときのことで
ある。Wiesbaden行きの電車には飛行場を通るものと通らないものがある。乗った電車が飛行場に行かない
ことに気がつき、次の駅で降りてFrankfurtに戻るためにプラットフォームにいた。ここで待っていて良いの
か不安だったので、側にいる人に聞いたら、今度来る電車に乗れば良いと教えてくれた。ところがそれだけ
ではなく、飛行場に行くためにはS Bahnの何番かを確認しないといけないと丁寧に説明してくれた。
そして、電車が来て一緒に乗り込んでFrankfurtで降りたのであるが、飛行場に行く電車が来るホームまで
案内してくれて、Sの番号を確認するようにと，念を押して握手して立ち去っていった。感謝感激でゆっくり
と話をしてお礼をしたい気持ちでいっぱいだった。もう一つは、行きがけの電車がInterlaken Ostに近づいた
ので席を立って、スーツケースを持って移動したときに、後ろから声がするので振り向くと、私の帽子を
持って立っていた。リュックに固定したつもりが外れて落ちてしまったようである。にっこりして私に
渡してくれた。有り難いことである。このような人達に支えられてこの旅行を無事に終えることが出来た
ことに、心から感謝したい。
